マイセン:ファッションで綴るマイセンの300年 様式ペア人形

マイセン磁器の誕生から300年の間、ヨーロッパでは様々な芸術様式が生まれ、流行となりました。18世紀の芸術様式「バロック」や「ロココ」、19世紀の「アール・ヌーヴォー」様式など、歴史や西洋美術史の教科書でも必ず載っているおなじみの様式ばかりです。
その間もマイセンは、ヨーロッパ最高の硬質磁器窯として作品を作り続け、そして時代の変遷に合わせて様式も変えてきました。
今回、そのマイセン300年の歴史をユニークな形で紹介する作品が「様式ペア人形コレクション」。「ファッションで綴るマイセンの300年」との副題がつけられています。

現代マイセンの代表的なジャンルのひとつである「手びねり人形」にその時代ごとの服装を着せ、マイセンが磁器を作り続けた300年間の歴史をひも解くという画期的なコレクション。
今年2012年よりコレクターズアイテムとして毎年発表され、合計で5シリーズのコレクションになります。
全ての人形のデザインは、手びねり人形の考案者であり現代マイセンのトップアーティスト、ペーター・シュトラングによるもの。ユニークな構想とユーモラスな表情にシュトラングらしさがあふれています。

今回のスタッフブログでは、様式人形と一緒に、その時代の特徴を持った代表的な作品もご紹介いたします。

第一作目は、「バロック」。
17世紀ローマに発し、ロココ様式が台頭する直前の18世紀序盤まで隆盛を極めた様式です。特徴は、曲線や装飾性、そして宮廷趣味にあります。マイセンにおけるバロック様式も、装飾性に富み、絵画的な作品を生み出しています。

「バロック」様式を代表する作品が、今年2012年の世界限定コレクションでも発表されました。ヨーロッパ最高のサーヴィスセット「スワンサーヴィスセット」です。2,000以上のピースから成ったという「スワンサーヴィスセット」はドイツ・バロック様式の集大成いわれています。

◄スワンサーヴィスセット「カポディモンテ」 2012年世界限定コレクション 世界限定75点
こちらのセットは、豪華に金彩を施した「スワンサーヴィス誕生275年記念作品」です。


様式ペア人形 2012年 第一作目「バロック」

サイズ:高さ 各約11cm、品番:83520/83521/2P

男性のカツラや上着のフリル、白いタイツ、そして女性の広がったスカートや手にした扇子など、「バロック」の特色が随所に見られる人形です。


第二作目は、「ロココ」。
18世紀にヨーロッパで発展を遂げたロココ様式は、バロック様式に通じる曲線や装飾性を特徴としながらも、優美さと軽快さにその真髄を見ることができます。マイセンのロココ様式には、当時フランス宮廷やフランスの画家たちの影響が反映され、優雅さを漂わせたフランス風の作品群となっています。

「究極のロココ」といえる「スノーボール装飾」。実用面よりも装飾性が重視されています。作品を覆い隠すように貼り付けられた小さな花は「ガマズミ」の花。この花はひとつひとつ繊細な手作業によって作られ、本体につけられていきます。18世紀には大小様々なスノーボール作品が人気を博し、現在もなお多くの人を魅了しています。
◄脚付スノーボール ボックス 2011年発表”JE(Japan Exclusive)”というロゴが入った日本記念シリーズ。


様式ペア人形 2012年 第二作目「ロココ」

サイズ:高さ 各約11cm、品番:83522/83523/2P

エレガントでロマンチックな「ロココ」様式。18世紀のフランスにその起源を発します。宮廷の生活を彷彿とさせる、夢あふれるペアとなりました。



第三作目は、「新古典」。
18世紀後半から19世紀初頭、ヨーロッパを席巻した新古典主義は、ギリシア、ローマの古典古代の復活を目指したものでした。マイセンにおいても、アンフォーラ型のローマ式花瓶やワインリーブの模様などに新古典主義の顕著な特徴を見ることができます。

このチューリップの花絵付は「マルコリーニ手法」と呼ばれ、1774年から1814年までマイセンの最高責任者として活躍したカミーロ・マルコリーニ伯爵がマイセン製作所の責任者となった通称「マルコリーニ時代」に生まれたものです。
独特なチューリップ絵付と忘れな草の組み合わせに特徴があります。「マルコリーニの花」とも呼ばれ、今日でも高い人気を誇っています。

◄美しい色合いのチューリップが描かれたカップソーサー


様式ペア人形 2013年 第三作目「新古典」

サイズ:高さ 各約11cm、品番:83524/83525/2P

華美なロココ様式の反動で生まれた「新古典」主義。ギリシャ風のスタイルが特徴です。女性と男性の衣装のポイントに使われたお揃いの青色がおしゃれです。


第四作目は、「ヒストリカル」。
19世紀、歴史を再発見するという考え方に基づき、当時の手法によって復刻されたヒストリカル(歴史主義)。ロココやビーダーマイヤー、新古典など、さまざまな歴史的様式がミックスされています。

マイセンにおいては、ギリシア・ローマ風のフォームや絵柄、ビスキュイ風の仕上げなど豪華絢爛な装飾を特徴としています。1827年に上絵付後の焼成に耐え、研磨の必要のない金が生まれたことも「絢爛豪華な装飾」に影響を与えました。

◄2匹のヘビをかたどった取っ手と果物模様の花瓶。
典型的な歴史主義の作品で、ギリシアの壷を模したアンフォーラ型が特徴です。歴史主義の極みとも言うべき装飾と、堂々たるその姿は見るものを圧倒し魅了します。


様式ペア人形 2014年 第四作目「ヒストリカル」

サイズ:高さ 各約11cm、品番:83526/83527/2P

19世紀後半に生まれた歴史主義「ヒストリカル」。18世紀からのさまざまな美術様式がミックスされています。ヨーロッパの豊かな歴史を感じさせる作品です。


5部作の最後を飾るのは、「アール・ヌーヴォー」。
ドイツでは「ユーゲントシュティール」と呼ばれる「アール・ヌーヴォー」。1890年~1910年頃にヨーロッパを中心に開花した芸術運動、芸術様式です。さまざまな表現方法が誕生し、植物のモチーフを多用した曲線的装飾、機能性や合理性と対極にある唯美的な傾向が見られます。マイセンの作品、特に人形や動物像にもアール・ヌーヴォーの影響が色濃く見られます。
この時期マイセンは、アール・ヌーヴォー様式を習得していたアーティストに多くの作品を作らせ、パリやロンドンの万国博覧会に出品して注目を集めました。 そのひとり、パウル・ショイリッヒも自由に制作するアーティストとしてマイセン磁器製作所で活躍しました。
◄人形「扇をもつ婦人」 ショイリッヒの作品の中でも最も美しいラインを持つといわれるこの女性像は1930年に原型が作られました。柔らかな羽扇、沢山のひだのついたドレス、そして内面から溢れ出るダイナミックな力は、磁器という素材を熟知したショイリッヒの真骨頂といえるでしょう。


様式ペア人形 2015年 第五作目「アール・ヌーヴォー」

サイズ:高さ 各約11cm、品番:83528/83529/2P

19世紀後半から20世紀にかけて一世を風靡した「アール・ヌーヴォー」様式。淡い色彩とモダンなスタイルが特徴です。



メルヘンプラークコレクション

また、もう一つのシュトラングによる手びねりシリーズが、同じく今年からスタートしています。
小さな壁掛けのプラークに、手びねりでメルヘン(童話)の主人公が表現されている「メルヘンプラークコレクション」。今年、2012年から5 年間の限定で発売されるシリーズで、第一作目である「長靴を履いた猫」は、大変ご好評をいただいております。


来年2013年は、カエルに姿を変えられてしまった王様とお姫様のお話「カエルの王様」。
本当は王様であるカエルが王冠を被り、お姫様に飛びつく姿がとても愛らしく表現されています。お姫様が、池に落としてしまう金の毬もプラークの片隅に立体で表現されています。メルヘンプラークの詳細は、こちら をご覧ください。

◄「カエルの王様」
品番:83M11/90A202


ペーター・シュトラング(Peter Strang)
ペーター・シュトラング Peter Strang
1936年 ドレスデン生まれ
1950年から54年までマイセン磁器製作所で造型を学び、その優れた才能からドレスデン造形大学のアルノルト教授のもとでさらに研鑚をつみました。1960年に製作所に戻り、アーティスト集団「芸術の発展をめざすグループ」の設立メンバーとなって活躍しました。シュトラングの作品は、20世紀後半の磁器芸術全体に大きな影響を与えたといわれます。動と静、緊張と弛緩など、相対するものの一致をめざし、その優れた抽象と象徴の中に「シュトラング」をいう個性を強く感じさせています。


マイセンの人形は、その種類の多さ、様式の多様さが一つの特徴となっています。輝く白磁の上に、繊細に描かれる顔の表情、手足の躍動感により、ヨーロッパ随一との名声をほしいままにしてきました。
手びねり人形は、伝統的な人形とは異なり、フォームをほとんど使わないところが特徴です。従来の人形は、多数のフォームを使ってパーツを作りますが、手びねり人形はほとんどフォームを使わず、手で自由に作られるため一品一品味わいが異なることが最も魅力的な点です。

■ 全国のマイセン取り扱い店舗はこちらよりご確認ください。
■ 数に限りがございますので品切れの際はご容赦ください。
■ すべて手作りで制作されるため、サイズが多少異なる場合がございます。ご了承ください。 
■ ご使用のPC・ブラウザにより、写真と実物の色合いは多少異なる場合がごさいます。



マイセン:日本のためのマイセン・干支プレートが完成するまで

前回、9月11日の更新では、マイセンのイヤーコレクションの、特に「イヤープレート」についてご紹介をしました。
今回は、日本のために特別に作られる「干支プレート」が完成するまでをご紹介いたします。

干支プレートは、1998年の「寅」よりスタートしました。現代マイセンに一時代を築いたハインツ・ヴェルナー教授が、「虎が音楽を奏でる様子」をユーモラスに描いています。
虎が寝転がってますが、実はこれは「酔っぱらった」様子です。もともと「酔っぱらって楽器を弾く動物」は、ヴェルナー教授の得意とするテーマで、この干支プレート以前にもこのテーマでプラークやサーヴィス・セットが作られてきました。

◄1998年干支プレート 「寅」

「酔っぱらって楽器を弾く動物」のテーマについて、ヴェルナー教授がこのように語ったことがあります。
「『酩酊』することで現実を忘れ、楽しく歌い踊る人や動物たち。夢と現実の間の微妙な境目。自分がどちらにいるのかはっきりとわからない、ふしぎな気分。」

1998年から、2009年までの12年間はすべてヴェルナー教授によるデザインでした。見る人を不思議な夢の世界へいざなう動物たちは、まず「ラフスケッチ」が描かれ、マイセンより届きます。

2008年干支プレート「ピッコロを吹く陽気なネズミ」のスケッチです。
画像をクリックするとスケッチの全体画像をご覧いただけます。番号順にご覧いただくと、完成までの過程をお分かりいただけます。

2008年干支プレート「ピッコロを吹く陽気なネズミ」

見ていただいてお分かりになるかと思いますが、少し強面で体つきもなんとなくみすぼらしい感じのするネズミす。これでは日本の皆様にお気に召していただけません。そこで、修正を依頼しました。
届いた修正版です。ネズミの毛並もやわらかくなり、顔つきも目がクリッとしてかわいらしくなっています。またプレートのフォームが丸に変更されています。お気づきいただけましたか?
青と金色の絵具で美しく彩色された最終のスケッチになります。ここから、絵柄の基となる銅版が作られるのですが、色の濃淡など、再現がとても難しそうです。
左側の彩色スケッチと比べて見てください。どちらがスケッチなのか、プレートなのか一瞬見ただけでは、見分けがつかないほど正確に再現されています。

もう一点、2009年干支プレート「ヴァイオリンを奏でる陽気な牛」のスケッチをお見せいたします。2008年干支プレート「ピッコロを吹く陽気なネズミ」とは別の形でスケッチの修正がありました。
こちらも画像をクリックするとスケッチの全体画像をご覧いただけます。番号順にご覧いただくと、完成までの過程をお分かりいただけます。

2009年干支プレート「ヴァイオリンを奏でる陽気な牛」
左側にあるスケッチと比べるとかなり絵の雰囲気が異なるのがお分かりいただけるかと思います。実はこれはヴェルナー教授では無く、別のマイセンのアーティストが描いたスケッチになります。
せっかく、別の提案があったのですが、やはりヴェルナー教授の描いた絵が採用されました。過去11年、ヴェルナー教授のデザインで発表していましたので、最後の年で変更をする訳にはいきません。
彩色された最終のスケッチです。牛の耳の形、しっぽの長さや形、バイオリンの柄など、最終スケッチまで数回の変更があったことにお気づきいただけましたか?最初のスケッチになかったまつ毛も加えられています。
大きな牛が、ヴァイオリンを弾きながら、足で器用にティンパニを踏み鳴らしている姿はユーモアに溢れています。新しい年の到来を華々しく告げ知らせる素晴らしいプレートになりました。

2009年の「ヴァイオリンを奏でる陽気な牛」で、ハインツ・ヴェルナー教授デザインによるシリーズは終わりました。最初の干支プレートの「寅年」から12年経った2010年の「寅」より、現代マイセンのアーティスト、アンドレアス・ヘルテンが担当するようになりました。

2010年干支プレート 「森の中の虎の親子」

深い森の中で虎が雄々しい姿でセタール(ペルシアの楽器)を弾いています。森のしじまに広がる穏やかな音色にこどもたちも耳を傾けているようです。
ヴェルナー教授のデザインと雰囲気が異なり、写実的であるだけでなく、芸術的な趣に溢れる絵柄のデザインとなっています。




デザイン案は数回にわたり、ドイツと日本の間でより良いものにするため、話し合いが行われます。時にはスケッチ画、イメージ画は数枚にもなります。こうしたスケッチ画は、きっとマイセンファンの方には、垂涎のスケッチでしょう。しかし、弊社としては一資料。スチール棚にファイルに入れ保管しています。

インターネットが発展した現在では、メールでやりとりをして、作品の画像を添付して確認をすることができます。しかし大切な部分は、顔を合わせて打ち合わせをする必要がありますので、弊社のバイヤーは年に数回、ドイツのマイセンへ出張します。
今年も既に数回目になるヨーロッパ出張にバイヤーが行ってきました。

◄ドイツ土産のチョコ、マイセンの食器が描かれています

このようなやりとりを重ねて、日本オリジナルの干支を題材にしたプレートや作品が出来上がります。
今年のイヤープレート、アニュアルプレートは発売されたばかりですが、弊社のバイヤーは既に、来年、再来年のデザインに向けてマイセンと打ち合わせを行っております。
少し早いですが、「2014年の世界遺産はどこが描かれるのか?」「アニュアルプレートの童話は?」「干支の馬はどのようなデザインになるのか?」  ご期待ください。

また、毎年、春と秋に全国の百貨店で開催されている「マイセン展」では、貴重な世界限定作品の他に、百貨店独自の企画品や特別品などが展示販売されています。
ぜひ百貨店のマイセン展に足を運び、作品をご覧ください。

※2013年秋10月以降の全国マイセン展のスケジュールはこちら よりご確認ください。
※2013年イヤコレクションも既に全国のマイセンを取り扱う百貨店で販売中です。全国の取り扱い店舗はこちら よりご確認ください。

ハインツ・ヴェルナー(Heinz Werner)
ハインツ・ヴェルナー Heinz Werner
1928年 ザクセン・コスヴィッヒ生まれ

幼少より天性の絵心を発揮し、1943年にマイセン磁器製作所の門をくぐりました。
多くの新しいデザインを発表し、現代マイセンの確立に大きな役割を果たしています。その主な作品としては、「アラビアンナイト」「サマーナイト」「ブルーオーキッド」「アーモンドの樹」「ドラゴンメロディ」などが挙げられます。

製作所を引退した現在でも、ヴェルナー教授の創作に対する意欲は衰えず、絵画やリトグラフの制作にも新境地を開いています。その作品の根本にあるのは、「生きる喜びの表現」。とかく抽象に走りがちな現代美術と異なり、人生の喜びを磁器の上にわかりやすく表現することを心がけているとの事です。また、「夢と現実」の境目、酩酊と覚醒のはざまにも深い興味があり、そこから酒によって歌い踊る、独特の動物たちや神話の人物が描かれています。文字通りマイセンの重鎮でありながら、親しみやすい人柄によっても多くのファンを得ています。


アンドレアス・ヘルテン (Andreas Herten)
アンドレアス・ヘルテン Andreas Herten
1967年、バルト海のそばのウィスマール生まれ

絵を描きたいという熱い思いにかられて国立マイセン磁器製作所の門をたたき1984年から1988年まで、花絵付を学びました。
ハインツ・ヴェルナー教授(1928年生まれ)のもとで研鑚を積み、同氏のデザインによる大きな作品の絵付を手がけるうちに、自由な創作・絵付で頭角を現し、はやくも1989年から芸術の発展をめざすグループに参加。チーフデザイナーであるヴェルナー教授の高弟としてその新しいデザインを共に企画。自由な創作を許す師匠のもとで、プラークなど室内装飾的な作品を多く手がけるようになりました。




*マイセンの製品は、マイセンオンラインショップ や、アマゾン「MEISSEN MANUFACTORY SINCE 1710 」
楽天市場「マイセン磁器日本総代理店」 、または、マイセン リーガロイヤルショップ全国主要百貨店 でお求めいただけます。





  *マイセンの日本公式SNS
オンライン上でもマイセンの世界をお楽しみください。
 



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