日別アーカイブ: 2021年6月16日

MEISSENメモ(84):
マイセン磁器制作「炎のいたずら」のご紹介

マイセン磁器制作「炎のいたずら」をご紹介します。

焼成の流れ




マイセン磁器の製作は、磁土を形づくり900-950度で素焼きすることから始まります。
900度になるまで15時間、900-950度で30時間、そして15時間かけ徐々に冷ます工程が、
磁土にとって最初の「試練」であり、ここで仕上がったものが次の工程へ進みます。
下絵付(染付)の場合、素焼きしたものに絵付し、釉(うわぐすり)をかけ本焼成します。
本焼成は1450度になるまで15時間、1450度になってから30から72時間かけ、また15時間かけて徐冷します。
人形などの上絵付の場合は素焼きしたものに釉をかけて本焼成し、純白の生地を得てから絵付し、
さらに焼成します。3回目の焼成は約900度。
世界でも最高温による「焼成」は、技術的に最も困難な部分のひとつです。
炉(窯)の中では「炎のいたずら」によるさまざまなアクシデントが起こり、炉が開くまで誰にもわかりません。
中で起こる風はカップの取っ手を人形に飛ばし、立つはずのサギや馬が、
へなへなと膝をついてしまうこともあります。
 
気まぐれな「炎のいたずら」による事例をご紹介します。
 

~白磁制作~
左:コーヒーポットを裁断し素焼きしたものと本焼成したものを比較しています。
素焼き後の本焼成では約16%収縮します。
このポットは8つのパーツからできており、裁断されたポットを見ると
部分によって厚さが異なる複雑な構造をしていることがわかります。
中:素焼きしたカップと施釉後に本焼成したカップのサイズを比較しても約16%収縮してします。
右:サギの本体の重みは焼成補助具にかかっています。
この補助具は磁器の素地から一つずつ新しく作られ、焼成によって人形と同じように収縮します。
1回目の本焼成では、彫像と支えが接している部分は施釉されていません。
そのため1回目の本焼成後、施釉し、次の焼成では支えを取り除いて、もう一度焼成します。




~焼成~
左:カップの取っ手がカップの縁を越えて取り付けられる
デザインの場合には、このような焼成補助具を用います。
右:施釉したカップを焼成する際、
2つのボウルを近くに置きすぎたために、
熱風によって互いにくっついてしまいました。




~変形~
左:約1,400℃の焼成でポットの本体から落ちた取っ手が
取り付け部分から外れ釉薬によって
近くに置かれたポットの蓋に乗っかりそのまま焼成されてしまいました。
右:焼成中の支えから外れてしまったために、
サギの細い脚では柔らかくなった磁器の重みに耐えられず、
脚は曲がり身体が倒れてしまいました。




~溶けてくっついた状態~
左:鍵は吊り下げて焼成されます。
焼成中に位置がずれたことで鍵は落下し
落ちた状態の形に変形し合体してしまいました。
右:約1,400℃の焼成でマグの本体から落ちた取っ手は、
釉薬によって近くに置かれたマグに引っかかりそのまま焼成されました。




~割れ~
群像「ブドウ搾り」には大きな割れがあります。
これは本焼成の加熱工程中の圧力によるものです。
磁器の厚さが異なったり不均質であったり、
もしくは温度が異なることで、
焼成中に磁器に圧力がかかり、さまざまな割れを生じさせます。
素地をよく寝かせ慎重に造形し、
焼成の際には温度や時間、置き方によって、
このミスを避けることができます。




300年以上にわたる職人たちの経験と実験によって、さまざまな対策が導き出されています。
しかし磁器の制作工程と自然の原料の予測不可能な点や、作品の複雑な構造や大きさのために、
時として作品は「炎のいたずら」によって思いもかけぬ姿で窯の中から現れるのです。
 


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